角田光代の小説「八日目の蝉」を読んだ感想
●読書感想文 八日目の蝉 著者:角田光代 発売:2011/1/22
おもしろかった〜。 ドラマを見て、映画を観て、最後は小説。 この順番以外、知らないけどこの順番で満足。
しかし、全てを制覇すると、「どんだけ八日目の蝉が好きやねん」と自分で自分に突っ込みたくなりますが、それほど好きな世界でもないんですよ。気が滅入ってくるので。なのに、気になってしまうのは、私が女だからでしょうか。
ドラマを見て、映画を観て、起承転結の全てを知っていても、読みたくなる小説でした。途中で止められなくなり、私にはしては珍しく1日で読んでしまいました。
小説より先にドラマと映画を見ていたので、 ごく自然に希和子が動き、薫が動き、小豆島の景色が浮かびました。
橙の夕日、鏡のような銀の海、丸みを帯びた緑の島、田んぼの緑に咲く真っ赤な花、風に揺れる白い葉。。。醤油の甘い匂いの中で、幸せそうな母と娘が、くっきりはっきり私の頭の中で動き回っていました。
ちなみに、希和子はずっと檀れいでした。小さい頃の薫は小林星蘭ちゃん。大きな薫は井上真央。小説の前半は、ドラマが動き、小説の後半は映画が動き、ドラマや映画で観た景色を思い浮かべながら読んでいました。映画とドラマを先に観た醍醐味です。
小説は、ドラマや映画よりも、淡々と語られている感じがしました。ドラマでは希和子が逮捕される瞬間が一番盛り上がり、映画では希和子と薫が写真館で写真を撮る瞬間が一番盛り上がっていましたが、そのどちらも小説では淡々と語られ、小説は事件の記録を読むような感じだったので、映画やドラマほど感情が揺さぶられることはありませんでした。
だけど小説には、ドラマや映画では描かれていないことが多々あり、そんな過去があったんだ、そんな事情があったのね、と新しい発見が面白かったです。例えば、エンジェルホームのエンジェルさんも、この事件で懲役八ヶ月、執行猶予二年の有罪判決を受けていたことや薫の実の母親である恵津子も不倫していたことなど。
作者である角田光代さんはインタビューで、創作の源は《常識といわれる事柄》に対する「怒り」と「疑問」から生まれると語られていました。「八日目の蝉」の場合は、「女性は子どもを産めば、誰にでも母性が生まれる。産まない女性には、母性が無い!」という常識を覆したかったらしいです。(私的には、そんな常識があったことに驚きなのですが・・・)
だからなのか、小説に出てくる実の母親は、最低な女でした。不倫はするし、娘にはつらくあたるし、ご飯は作らないし、掃除はしないし、夜遊びはするし・・・。明らかに、誘拐犯である希和子の方が愛情を注いでいました。希和子に感情移入するよう計算された人物設定なんだろうけど、それにしてもあんまりな描かれ方。
でも、本当に恵津子(実の母親)のような人がいたとしても、私は「あなたは最低な女ね」とは責められないな。可哀想な人だと思う。夫も娘も自分の所に帰ってはきたけど形だけ。心は憎き女に奪われたままなんだもん。娘から愛されないのは辛いと思うよ。愛されるように頑張って欲しかったけどさ。
一緒にご飯を食べる人がいて、一緒に笑って、たまに喧嘩して、そんな日常がとても幸せなことだと思える小説でした。自由に生きられるようになった分、普通に生きるのは難しくなったよね。
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