吉田修一「おんなたちは二度遊ぶ」の感想文
●読書感想文 女たちは二度遊ぶ 著者:吉田修一 発売:2006/3/25
昔、好きだった人の誕生日って覚えてますか?
私は、覚えている人もいるけど、 忘れている人もいます。 おかしいなぁ、あんなに好きだったのに。
初恋の人(片思い)の誕生日も忘れてます。 何月生まれだったかも思い出せない。 昔過ぎるから?おかしいなぁ、あんなに好きだったのに。
吉田修一の短編小説「女たちは二度遊ぶ」を読みました。 過去の女の物語。11人の女性が登場します。
過去を思い出している設定なので「覚えてないが」とか「記憶があるのだが」とか「今ではもう思い出せない」などという言葉がよく出てきます。なぜかこの言葉が出てくるとイライラして「覚えてないなら語るんじゃない」と思ってしまうのですが、「覚えてない」という言葉は謙遜しているとしか思えないくらいリアルで、昔のことをよく覚えているんですよ。
男性の恋愛は「名前をつけて保存」 女性の恋愛は「上書き保存」
という誰が言ったかわからない名言があるけど、男性は、過去の女を「女たちは二度遊ぶ」の小説に出てくる主人公のように、はっきり覚えているもんなんでしょうか?私が好きだった男も、私の誕生日は覚えていてくれるのかしら?
元彼が私をどんな風に記憶しているのか、興味はあるけど聞くのは恐い。なんとなく私の記憶と一致してなさそう。そんなことあった?という事も多そうだし、それは違うでしょ!という事も多そう。できたら私のことは美化していて欲しいな(笑)
小説は、めいちゃんも言ってたけど、淡々としてました。おもしろいといえばおもしろいし、おもしろくないといえばおもしろくないかも。「十一人目の女」だけが、他と違い「悪人」風でおもしろかったけど、一番好きなのは「最初の妻」かな。「公衆電話の女」は昔を思い出して懐かしかったです。
この小説を読むまですっかり忘れていたけど公衆電話。 公衆電話には私も思い出がたくさんあります。 もしかしたら携帯電話の思い出よりも多いかも。
高校生の時、家の電話だと親に話を聞かれるので、わざわざ公衆電話から掛けたことがありました。大学生の時、住んでいた寮の電話は赤電話。しかも10円玉しか入らない。市外電話になるとアホみたいに10円玉が必要になるので10円玉は貴重でした。お金がなくなり途中で電話が切れると何とも虚しい気持ちになるの。だから10円玉は大事に大事に貯めていました。
100円玉が入る公衆電話が登場したときはすごく嬉しかったです。でも、100円玉を入れたときに限って短い電話だったりするの。そんな時は凄く損した気分に。マーフィーの法則みたいですよ。
それから、この小説の主人公と同じように電話ボックスに並んでイライラしたこともあったし、話している最中に「早くしろ」と怒鳴られたこともあったな。なんか思い出すと他にもいろいろ思い出して懐かしい。電話ボックスでしゃがみ込んで泣いたこともあったし、10円玉が足りなくなって見知らぬ人に借りたこともありました。全て若い頃の思い出です。だからか余計懐かしい。若さと同じで、もうこんな経験は二度と出来ないんですね。しみじみ。
「女たちは二度遊ぶ」という意味深なタイトル。 どうしてこのタイトルを付けられたのか気になっていたんだけど、結局、読み終わってもわかりませんでした。現実で遊んで、過去を思い出して遊んで、「おんなたちで二度遊ぶ」ならわかるんだけど。なぜ思い出される女が遊ぶのか。それとも、もて遊ばれたという被害者意識でもあるのかしら。
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