クリスマスイブ
卒業への単位取得も問題なく進んでいて、全部の授業に出なくても大丈夫でした。
週に学校へ行くのは3日程。
代表だったまっきぃも、内定先にバイトに行くことになり、極端に会う回数も減りました。いよいよ、引き際なんだろうな…と、自分からの連絡を絶つことにしました。ちょうどその頃、編集プロダクションや出版社の研修に行くことができ、私も忙しくなっていました。
あっという間に10日、20日と日にちが経ってしまっていました。
けれど、研修には行っても結局はまだ迷い、選考から辞退したりというのを繰り返していました。自分が何をしていきたいのか、そもそも、なんでこの業界で仕事をしたいのか…。 考え込むことが多くなりました。 恋愛だけでは、人生は進まない。 「まず自分だな」と痛感した時期でもあります。 卒業してもあえる可能性ができたとはいえ、このまま思い続けるのは、あまりに情けない。ため息ばかりついて、ただただ、毎日を流すように過ごしていました。
ところが、突然奇跡がやってきました。 サークル仲間で飲みにいったとき「クリスマスは、バイトもないし『エクソシスト』見にいこうかな〜」と言ったことで、まっきぃと会うことになりました。
まっきぃも見たかった映画のようで、その日は仕事もなく予定があいていたようです。「クリスマスに二人で会う」といっても友達同士の遊びの約束な感覚でした。
なにせ見る映画は当時話題のホラー映画。(女の子がブリッジしながら階段下りてくるやつ)しかもその後は、まっきぃが行ってみたいと言っていた、国宝のあるお寺に行く予定でした。…クリスマス・イブなのに。
でもその日から、彼からの連絡は特にありませんでした。 23日になっても音沙汰がなく、自分から「どうする?」というのも気が引けました。12時を過ぎ、日付けが変わっても、連絡はなし。
やっぱり冗談だったんだろうか…。 もう忘れてしまったんだろうなぁ。
と、あきらめながらも常に携帯をそばに置き、ため息つきつつ何度もメールを確認。着る服を散々悩んで決めて、準備していました。 待って待って、12時半。やっと彼からの連絡が来ました。 最終電車で仕事から帰るところのようでした。 翌日の時間を決め、待ち合わせ場所を決めたときは、ホッとして涙が出ました。
翌日のイブは、とーっても寒い日でした。 お昼を食べて、映画を見て、後はただひたすらお寺をめざしました。寒さに耐えながら歩いていたので、会話らしい会話はあまりなく、その後夕飯に入った店で、少し話した程度でした。
それでも、なんだか落ち着いた。 楽しかったんです。私は常に浮き足立ってました。 まっきぃに連絡をしないよう意識したり、もう卒業だからあきらめなくちゃ…と悩んだことも、なんだかどうでも良くなってしまうような。
帰り際、まっきぃは駅まで送ってくれました。「じゃぁね」といって駅への階段を半分まで下りたところで、ふと振り返りました。 まっきぃは、もう後ろを向いて歩き出していました。 その姿に、「やっぱり、ダメなんだ。」と、トボトボとうちに帰りました。一瞬前まで楽しかったのに、2人でいた時間の浮かれを、正された気がしました。 その後、また学校が始まるまでまっきぃとの連絡は途絶えました。 彼も忙しかったし、奇跡から目覚めた私も「忘れる努力」をしていたんです。
その後、2人でいることになってから、この日のことについて話したことがあります。 私が「ずーっと帰っていくのを見ていたんだよ」というと、まっきぃはびっくりしたようでした。 「俺も、ゆう☆が階段を下りていくのを見てたのに」、と。 私たちは、うまい具合にお互いの背中を見送っていたのでした。
ゆう☆の結婚体験談1月31日
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